今年30になる僕が、『ライ麦畑でつかまえて』を読んでみようと思い至ったのは突然の事だった。
出演した動画のプチ炎上など過去に人並み以上の黒歴史を塗り重ねてしまった僕は、突如として匿名で生きることを志したのである。
―――――――――――――そうだ、誰も僕を知らないところに行こう。
真っ先に思い浮かんだのは大好きなアニメ『攻殻機動隊』の
「僕は耳と目を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX / 第11話「亜成虫の森で PORTRAITZ」
I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes
という言葉だった。
そういえば、攻殻機動隊自体は何度も繰り返し鑑賞しているが、この発言の元ネタとなったサリンジャーの小説を一度も読んだことはない。
じゃあ読んでみるか、という軽いノリが直接的な動機だった。
この小説をGoogle検索すると禁書や怖いといった仰々しい検索候補が並ぶ。
事実、かなり曰くつきのようで、レーガン大統領殺害未遂事件を起こしたジョン・ヒンクリーやジョンレノンを射殺したマーク・チャップマンもポケットにライ麦を忍ばせているほどの熱烈なファンだったのは割と有名な話。
一体なぜ凶悪犯をそこまで魅了したのだろう。
読破してみた今、その理由の一端が理解できたような気もする。
(凶悪犯に感情移入するつもりは毛頭ないが)
結論、主人公ホールデンはINFPでHSPの純粋であるが故の社会不適合者ですよということだ。
同MBTIとして、小説の登場人物なら『人間失格』の大庭葉蔵、漫画アニメも含むならエヴァの碇シンジや東京喰種の金木ケンあたりが当てはまる。
全員ピュアすぎる。
作品というインターフェースを境に、このような人物と相対してしまうと僕は決まってイライラしてぶん殴りたく衝動に駆られる…と同時に過剰ともいえるほど自己投影できてしまって結構ヘコんでしまう。
MBTIは何度やっても時間と場所を変えてもINFP-Tにしかならない。
ライ麦は永遠の青春小説であり、思春期の少年にとって通過儀礼的な小説と言われている。
自分は高校の入学式以降、通過儀礼なるものを経験したことが無い。
むしろ忌避していたとさえ思う。
たまらなく気恥ずかしく、やるせない気持ちになってしまうのだ。
高校は卒業間際で行かなくなったし、大学の入学も卒業も式典には不参加、成人式も出席せず近所のBARでバーテンダーさんと簡単にラムコークで乾杯して儀礼を終わらせた。
そんな自分が今この小説を手に取ったのは意味があるのかもしれないし、なんの意味もないのかもしれない。
おわり
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